HIP HOPの入門盤〜NASのILLMATICがなぜこんなにも評価されているのか〜

こんにちわ!lll FAITHS DJスクール 仙台校です!
過去2回ヒップホップとはなんぞやという記事を書かせていただきました。

 

HIPHOP文化のはじまり~ヒップホップ誕生秘話~

今回はNASというアーティストの「ILLMATIC」というアルバムについてです。

 

なぜこのアルバムを特集するのかというと
ある程度HIP HOPについて詳しい人に
「ヒップホップの入門盤といえば?」
と聴くと8割の人は「NASのILLMATIC」という答えるかと思います。

なぜこんなにも地味なアルバム(個人的には最強だと思っています)が入門盤として評価されているのか。それをサクッとご紹介。

 

▼NASとは?

 

NASとはアメリカNYを主に活動するラッパーです。

 

 

正式なデビューは1994年。この「ILLMATIC」というアルバムでデビューしました。
※初音源は「MAIN SOURCE」の「Live At The BBQ」です。

 

その後もHIPHOPシーンの重鎮としてシーンを牽引し続け、今でも話題になるラッパーです。

 

▼東海岸HIP HOPの逆襲

 

90年代のヒップホップは良く東海岸 / 西海岸にカテゴライズされます。

 

 

これは両地域のHIP HOPアーティスト達の音や発信するメッセージ、スタンスに大きな違いがあったからです。これは地域のライフスタイルによる影響もあります。

更に、HIP HOP東西抗争とも言われる事件も90年半ばにはあったり。

 

※東西抗争の中心となった2PACとThe Notorious B.I.G.です

 

というわけで90年代のHIP HOPはNYとLAどっちがイケているんだ!というように切磋琢磨し合い、HIPHOP市場の拡大にも繋がったわけです。

90年代初期に入ってからは西海岸のHIP HOPが主流でした。特徴的な音と過激なリリック(歌詞)で全米を席巻していました。いわゆるギャングスタ・ラップというものです。

 

HIP HOP発祥の地NYのラッパーからしたら面白くありませんよね。そこで卓越したラップセンスを持つ新人ラッパー「NAS」に注目し、ニューヨークヒップホップ復興のシンボル最終兵器としてリリースされたのがこのアルバムです。

 

▼最強プロデューサー陣

 

ヒップホップのトラック(楽曲)を制作する人物をプロデューサーと呼びます。この頃のHIP HOPはまだ成長期、様々なプロデューサーが試行錯誤を繰り返し、日々みんなを驚かせるようなFRESHで新しい音源づくりに励んでいました。
90年代の東海岸HIP HOPを語る上で超重要プロデューサーが何人かいます。

 

 

 

・DJ PREMIER
・PETE ROCK
・LARGE PROFESSER
・Q-TIP

 

今では伝説と言われる人たちです。
そんなNYの最強のプロデューサー陣が全員このアルバムには参加しています。しかも、NYのHIP HOPの復興を目指し、各人の入れ込みようも半端無かったそう。
HIP HOP最重要プロデューサーであるDJ PREMIERなんかはこんな事を言っています。

 

「みんなのビートを聴いてビビったね。聴いた瞬間自分のラボ(スタジオ)に戻って曲を作り直したんだ。」

 

プロデューサー陣もガチンコで切磋琢磨しこのアルバムを作り上げました。

 

▼卓越したリリックセンス

 

ラッパーであるNASもとんでもない天才でした。歌詞というかもはや詩の領域です。NASのデビュー音源を聴いた瞬間NYのラッパー達は度肝抜かれたそうな。

 

「NY STATE OF MIND」

“I never sleep, cause sleep is the cousin of death
Beyond the walls of intelligence, life is defined
I think of crime when I’m in a New York state of mind”

 

“俺は眠らない、睡眠は死のいとこだから
知性という壁の向こうに人生が定義されている
だから俺は犯罪を考える NY state of mindのときは”

 

NASはプロジェクト出身(=黒人低所得者団地)です。

 

プロジェクト出身の人間はロクな教育も受けられず、ギャングかドラッグの売人になるのがほとんどだとか。プロジェクト出身なだけで、できる仕事も限られているそうです。

 

そんな産まれた場所でもうすでに人生が決まっているという閉塞感・虚しさが滲み出ています。NYの黒人貧困街(ゲットー)の荒んだ様子が痺れるように伝わってくるリリックです。

 

▼最後に

 

このような理由で「ILLMATIC」はHIP HOPの伝説のアルバムであり、ある意味教科書的なアルバムになったのです。このアルバムは発売から数年後にプラチナ・ディスク認定されています。これは当時爆発的なヒットを飛ばしたわけではなく古典として語り継がれてきた結果、じわじわ売れ続けた事を意味しています。

 

現代のヒップホップが好きな人達は地味に感じるかもしれません。
※筆者自身の中学生の時このアルバムを聴いて地味だなと思いました。
ただ聴いているうちにだんだん語り継がれる理由が分かってくるのではないかなと思います。

 

それだけの破壊力と耐久性を兼ね備えたアルバムです。
アメリカのHIP HOPは何を言っているのか分からず、苦手なんて人も多いかなと思います。

こういったHIP HOPの知識やその時のシーンに与えた影響、エピソードを踏まえて聴くとより楽しめるかと思います。